未来ある山梨の子供たちのために!!

山梨県議会(令和3年9月定例会)・代表質問

1.山梨県CDCの活動実績と今後の取り組みについて

 昨年一月十五日に我が国で初めての新型コロナウイルス感染症の患者が確認されて以来、一年八か月余が経過しました。新型コロナウイルス感染症との戦いは、当初の予想に反し、長期戦を強いられております。

 

 本県の感染状況を見ますと、本年四月以降、従来の野生株の一・三倍の感染力とされるアルファ株の流行により感染者数は増加し、六月の感染者数は、複数のクラスターが発生したこともあり、五百五十一人と、それまでの最多を記録しました。

 

 その後、七月上旬には若干落ち着きを見せたものの、七月下旬からは、更に感染力が強いと言われるデルタ株の流行により、感染者数は再び増加に転じ、先月には、昨年度一年間の累計をわずか二週間で上回ってしまうなど、加速度的な感染拡大に至りました。

また、先般、感染力やワクチンへの抵抗力が強い恐れがあるラムダ株やミュー株が国内でも確認されるなど、新たな株による更なる感染拡大が懸念されます。

 

 県では、本年四月に設置した山梨県感染症対策センター、山梨県CDCを司令塔として、新型コロナウイルス感染症対策を実施してきていると承知しております。

 

 私は、感染対策の効果を高めるためには、行政や医療従事者のみならず、事業者を含めた全ての県民が危機感を共有し、気持ちを一つにすることが肝要と考えております。

 

 また、そのためには、状況の変化に即応した適切な情報提供が必要であり、これにより県民の共感と対策の実行につなげることが重要であると考えます。

 

 また、感染症から県民の生命・健康を守り、社会生活を維持するためには、感染者を早期に発見するための検査体制の強化や、感染者が急増した場合でも医療的なケアを受けることができる体制整備が重要であると考えます。

 

 そこで、これまで県CDCを中心としてどのような取り組みを実施してきたのか、また、更に感染力の強い新たな変異株による感染拡大に備え、今後どのように取り組んでいくのか併せて伺います。

(長崎知事)

 変異株による感染拡大に対しましては、本年4月から始動した山梨県CDCが中心となり、庁内各部局や医療機関等と連携し対策を実施して参りました。

 

 まず、これまでの取り組みについてですが、県CDCの専門家が変異株の感染力の強さや感染事例と対策のポイントについてわかりやすく情報提供し、注意喚起を行って参りました。

 

 また、デルタ株の流行に際しては病床等のひっ迫状況の見える化による注意喚起や、県CDC専門家の意見も踏まえた不要・不急の外出自粛、イベント開催制限等についての要請を行ったところであります。

 

 更に、早期発見により感染拡大防止を図るため、検査対象の拡大や高齢者施設等への定期的なPCR検査を実施して参りました。

 

 加えて、先月には医療提供体制が枯渇の危機にあったことから、病床の増床、宿泊療養施設の増設に加え、県CDC専門家の提案による医療強化型宿泊療養施設の稼働や退所後ケアの導入などにより、医療提供体制の増強を図ったところであります。

 

 次に、今後の更なる感染拡大に備えては、来月、感染症情報を一元的に発信するポータルサイトを開設し情報発信力を高め、県民の皆様との意識の共有と対策の実行につなげるとともに、新たな変異株等の情報を適時適切に発信し、注意喚起を行って参ります。

 

 また、PCR検査機器等を整備する医療機関への助成により検査体制を強化するとともに、新たな宿泊療養施設の開設など、医療・療養体制の充実を図ることにより、県民の皆様の生命・健康をお守りできるよう、県CDCを中心として、なお一層取り組んで参ります。


2.新型コロナウイルス感染症に関する対応の検証について

 新型コロナウイルスは、長期にわたって世界中を大混乱に陥れ、既に累計で二億人を超える感染者を発生させるとともに、多くの尊い命を奪い、第二次大戦以来の惨禍とまで称される重大な事態をもたらしてきました。

 

 しかしながら、現在、ゲームチェンジャーと言われるワクチンの接種が急ピッチで行われており、治療薬の開発も進んでおりますので、私たちは遠からず新型コロナウイルス感染症に打ち克つことができるものと信じて疑いません。

 

 一方、千九百十八年に発生したいわゆる「スペイン風邪」をはじめとして、二十世紀以降、新型インフルエンザによるパンデミックの脅威はおよそ十年から三十年の間隔で表面化していることから、人類はこれからも未知の感染症に見舞われ続けるであろうこともまた、疑いようのない事実と言わざるを得ません。

 

 今回のコロナ禍においては、国も地方公共団体も、前例に乏しい状況を前に試行錯誤を重ね、国民の生命や生活を守るべく未曾有の国難に立ち向かってきました。

 

 本県においても恐らく例外ではなく、知事をはじめ県職員は、新型コロナウイルスがもたらす事態の深刻さに直面して、苦悩し、最善の策を手探りで模索しながら、折々の対処・対策に取り組んでこられたのではないかと拝察いたします。

 

 私は、将来の未知なる感染症発生への備えを固めるためにも、こうした経験を一過性のものとしてしまうのではなく、県がこの感染症に対してこれまでどのように向き合い、対策を打ち、その結果がどうであったのかを検証しておくことが有効であると考えます。

 

 「備えあれば憂いなし」と言いますが、今回のコロナ禍が我々に投げかけているのはこのシンプルかつ明瞭な格言の重要性なのではないでしょうか。

 

 そこで、新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの対応の検証について、県のご所見を伺います。

(長崎知事)

 県では、昨年1月に圏内初の新型コロナウイルス感染症の陽性者が確認されて以後、事態への対処や各般の対策に取り組んで参りました。

 

 しかしながら、特に初期段階において直面いたしましたのは、医療提供体制や物資の備蓄が全く不足しているという事実であり、本県の新型コロナ対策は、遺憾ながらほぼゼロと言っても過言ではない状態からのスタートとなりました。

 

 これは、2009年に発生した新型インフルエンザによるパンデミックへの対応の経験が亡失してしまっていたことに起因するものであります。

 

 また、その後においても、度重なる感染拡大の波に襲われる中、感染防止と経済との両立を図り、県民の皆様の命と生活を防衛するため、暗中模索を強いられて参りました。

 

 更に、県内の陽性患者がいわれなき差別を受け、SNS上で誹誘中傷を受けるなど、全く想定していなかった新たな社会問題にも直面し、対応に苦慮することもありました。

 

 こうした幅広い問題への対処を通じて蓄積された経験は、まさに貴重な情報の宝庫であり、議員御指摘のとおり、将来の未知なる感染症発生時において迅速かつ的確に初動対応とその後の対策をとる上で極めて有用であります。

 

 感染症危機管理の専門家である阿部圭史(けいし)氏の著書「感染症の国家戦略」におきましても、危機管理活動のどの時点でどのような対応を行うのが適切であったかを、主観を排して事実に基づき精査し、建設的な検証を行うことが重要であると指摘されているところであります。

 

 このため、これまでの新型コロナウイルス感染症対策について、県庁内に散在する情報を整理し、県の事態対処や対策の在り方に検証を加え、記録として整備することといたしました。

 

 この検証及び記録は、感染症危機に備える事前準備行動の一環として、県の行動として反省すべき点、改善を要する点などがあった場合にも忌t障なく評価を加えるため、第三者への委託により客観性を確保しながら進めて参ります。

 

 感染症対策についての教訓と指針を後世に継承するため、これまでの経験を県庁内に眠らせておくのではなく、直ちに活用できる県民全体の情報資産へと高めるべく、この検証・記録事業に取り組んで参ります。


3.東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催を契機とした本県の今後の取り組みについて

 今月五日に閉幕した本大会は、新型コロナウイルス感染症の影響により、史上初めて開催が一年延期される大会となりました。

そうした中ではありましたが、日本選手団は大変目覚ましい活躍を見せてくれました。

 

 本県ゆかりの選手も総勢八名が出場し、レスリング競技では乙黒拓斗選手が金メダル、文田健一郎選手が銀メダルを、卓球女子団体では平野美宇選手が銀メダルを獲得するなど大いに活躍されました。

 

 また、私の地元甲州市において、事前合宿で市民と交流してきたフランスハンドボールチームが男女とも金メダルを獲得する偉業を成し遂げ、市民は大いに盛り上がったところであります。

 

 本県においても、大会に向けて様々な取り組みを行ってきました。

 

 聖火リレーにおいては、全国的に公道実施が断念される中、知事が沿道での観覧自粛要請等の対応を行いながら公道で実施することを英断されました。桃畑やぶどう畑など山梨ならではの風景の中を、聖火トーチを掲げたランナーが走る姿は、今後も永く県民の心に残ることと思います。

 

 特に、本県も会場地となったオリンピック自転車競技ロードレースでは、安全かつ円滑に実施されたことはもとより、山中湖など本県の美しい自然を背景に選手たちが激しい攻防を繰り広げる映像が世界中に発信されたことは、山梨県としては大成功だったのではないかと思います。

 

 私は、こうした大会の成果を活用し、発展させていくとともに、地域経済の活性化にもつなげていくべきと考えております。

 

 そこで、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした今後の取り組みに対する県の御所見を伺います。

(スポーツ振興局長)

 今回の大会では、本県が初めてオリンピック自転車競技口一ドレースの会場地となり、世界最高水準の選手達が一堂に会して富士の麓を駆け抜けたコースは、一躍圏内外のサイクリスト憧れのメモリアルロードとなりました。

 

 また、事前合宿では、3力園、10競技、268人の海外選手団と陸上競技日本代表選手団の受け入れを行い、合計14種目でメダルを獲得するなど、合宿地としてのクオリティの高さが実証され、そのステータスが確立されたところであります。

 

 こうした成果を活用し、県では、オリンピックコースを活用した自転車イベントの開催や事前合宿地でのスポーツキャンプの誘致など、スポーツツーリズムの推進に積極的に取り組んで参りたいと考えております。

 

 これらの取り組みを強力に推進するため、来年度、地域スポーツコミッシヨンを設立することとしており、この組織が原動力となって、スポーツを切り口とした地域経済の活性化につなげて参ります。


4.性の多様性が尊重される社会の実現に向けた取り組みについて

 同性カップルを公的に認めるパートナーシップ宣誓制度について、私の地元である甲州市が県内初の導入を目指し、検討に入るとの新聞報道がありました。

 

 市に働きかけたのは市内在住の高校生で、LGBTQなどの性的少数者が暮らしやすい社会を実現しようと、自身が中心となり八月に市民団体を発足させたとのことであります。

 

 身近に高い志を持って活動する、これからの社会を担う若者がいることを大変嬉しく、また心強く思っています。

 

 また、今月一日からは三重県において、茨城県、大阪府、群馬県、佐賀県に次ぐ五番目の県としてパートナーシップ宣誓制度を開始しており、全国では既に百を超える自治体において導入されていると承知しております。

 

 私は、当事者の方から「社会的に自信を持って自分らしく生きるため、公的に認知されることで非常に大きな勇気を与えられる」との意見を承っており、制度の意義はまさしくここにあると考えております。

 

 世界中の注目が集まる中開催された東京オリンピック・パラリンピック大会においても、「多様性と調和」を基本コンセプトのひとつに位置づけ、性的指向を含めたあらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れることで社会は進歩するとしています。

 

 一人ひとりがお互いに認め合う世の中へと変えていくための動きはもはや時代の趨勢であります。

 

 新たな制度の導入には常に慎重な検討を要すると考えますが、誰一人取り残さない、暮らしやすい山梨を築いていく上で、できるところから取り組みを始める必要があるのではないでしょうか。

 

 そこで、性の多様性が尊重される社会の実現に向けた取り組みについて、県のご所見を伺います。

(長崎知事)

 少子高齢化や世界的競争が激化する今後において、地域の活力を維持し、県民の豊かな生活を維持・発展させていくためには、山梨は、圏内はもとより国外の地域との間でますます厳しさを増す地域間競争に勝ち抜かねばなりません。

 

 そしてそのためには、山梨という地が県内外、国内外から多様な人材、才能が集まる場所となる必要があります。

 

 私はLGBTQなど性的少数者が暮らしやすい地域に山梨が脱皮できるかどうかは、まさに多様な人材が集まる地域になり得るか否かの試金石になるものと考えています。

 

 この点、県内で先駆的取り組みをされておられる御地元の甲州市には、深く敬意を表する次第です。

 

 県におきましては、これまで、性的少数者の方々に対する理解促進を図るため、当事者の方を講師に招き、県民向けの講演会や職員を対象とした研修会を開催して参りました。

 

 本年度はこれに加え、本県における現状や課題の把握、取り組むべき施策の検討を行うため、先月、当事者や弁護士、有識者などからなる多様性を尊重する山梨検討会の第1回を開催いたしました。

 

 会議においては、理解促進に向けた啓発活動の必要性や、安心して相談できる窓口の大切さ、多様な人材の活躍は企業にとって強みとなることなど、様々な見地から御意見をいただいたところであります。

 

 こうした御意見を踏まえ、課題を整理した上で、第2回の会議に向けて具体的施策の検討を進めることとしております。

 

 性的指向や性自認に関わらず、誰もが能力と個性を発揮し、かけがえのない個人として尊重される覧容な社会の実現を目指し、鋭意取り組んで参ります。


5.行政手続のオンライン化について

 近年、超スマート社会と表現される、ソサエティ5・0の実現に向け、国や自治体では様々な取組を実施しています。

 

 行政手続のオンライン化もその一つであり、国では、令和元年五月に公布された「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」において、行政手続のオンライン実施が原則化されました。

 

 併せて、行政手続などにおける各種の添付書類の省略、自動車保有、子育て、介護など各種ワンストップサービスの推進などが進められていると承知しております。

 

 一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、「新たな日常」構築の原動力として社会全体のデジタル・トランスフォーメーションが求められており、政府基本方針では、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「誰一人取り残さない人に優しいデジタル化」が示されました。

 

 このビジョンの実現に当たり、自治体が取り組むべき事項や内容を具体化した自治体デジタル・トランスフォーメーション推進計画が策定され、重点的に取り組む事項として、行政手続のオンライン化が挙げられています。

 

 このような中、県が策定した山梨県デジタル・トランスフォーメーション推進計画における主な取組の一つとして、行政手続のオンライン化が挙げられており、全ての行政手続について検討を行った上で、順次、オンライン化に取り組むこととされています。

 

 しかしながら、現在約三千七百件ある手続のうち、オンライン化されているものは二百件程度に留まっていると聞いています。

 

 今月一日にデジタル庁が創設され、行政のデジタル化への期待がこれまで以上に高まる中、新しい生活様式への対応において、非対面、非接触での申請を可能とすることは非常に重要であり、また、住民の利便性向上の面からも早期にオンライン化を実現すべきと考えますが、現在の取組状況と今後の見通しについて伺います。

(総務部長)

 県では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受l寸、新しい生活様式に対応するため、令和3年3月に山梨県行政手続オンライン化方針を策定し、原則全ての手続をオンライン化することとしました。

 

 オンライン化に当たっては、事業者や県民など申請者の方々にオンラインでの手続を義務づけるのではなく、書面での申請に加えて、オンラインでも手続が完結できるよう取り組むこととしております。

 

 また、本人確認の方法や電子署名の取り扱いなどを明確化するとともに、セキュリティのレベルに応じて、市町村と共同で運用している電子申請システムや電子メールによる申請を使い分けてオンライン化に対応して参ります。

 

 本年度はこの方針に沿って、オンライン化されていない約3500件の手続について、調査等を実施し、対面での対応が義務づけられているものなど、オンライン化が不可能なものを除く約3000件の手続について対応する準備を進めております。

 

 このうち、申請時に手数料を要するものを除いた約2500件の手続については、順次オンラインによる受付を開始し、概ね12月までに完了する予定であります。

 

 今後は、電子申請に係る手数料徴収の運用方法等について検討を行い、早期に実施できるよう継続してオンライン化を推進し、県民の利便性の向上を図って参ります。


6.ヤングケアラーへの支援について

 本年四月に公表された国の調査結果において、ヤングケアラーが中高生に一定数いることが分かりました。

 

 ヤングケアラーは、ともすると、「家族内の問題」と捉えられ、果たして支援が必要なのか、と考える人もいるかもしれません。

 

 しかし、核家族化が進み、共働き世帯やひとり親世帯が増加するなど、家族の構成がこの数十年で大きく変わった現在において、家族の助け合いを前提とした考え方では、しわ寄せを子どもが受けることになる恐れがあります。

 

 その結果、学校に行けなかったり、友達と過ごす時間がなかったり、子どもがその時期に経験すべき機会が奪われ、本来守られるべき子ども自身の権利が侵害されることを懸念しています。

 

 私は、今年度から大学院で子どもの権利に関する研究に携わっておりますが、近年、社会問題となっているヤングケアラーについても高い関心があり、子どもの今と将来を真剣に考え、支援していく必要性を強く感じています。

 

 知事は、本年六月議会において、実態調査を行い、県内の実態を把握した上で、子どもとその家庭に寄り添った支援に取り組むと答弁されました。

 

 その後、子どもたちが夏休みに入る前に、県内の小学六年生以上の全児童、生徒約五万三千人、更には子どもや家庭を取り巻く支援者に対し、実態の把握のみならず、アンケートを進めながら現状を認識させるとともに、相談促進にもつながるよう工夫して実施されたと伺っておりますが、こうした知事の迅速かつきめ細かな対応に敬意を表す次第であります。

 

 この調査を契機に子どもがヤングケアラーを正しく理解、認識し、子どもが課題解決のために「相談」という一歩を踏み出せるような取り組みを推進するとともに、相談を受け止める支援者の聞き出す力や受け止めて対応する力を向上させる必要があると考えます。

 

 また、ヤングケアラーを早期に発見し、必要な支援機関へ確実につなぎ、より適切な支援を提供するためには、あらゆる場面において、介護や福祉、医療、教育等の関係者が連携することが何より重要であると感じています。

 

 県では、ヤングケアラーへの支援を強力に推進していくとのことでありますが、今後、どのように取り組んでいくのか伺います。

(長崎知事)

 ヤングケアラーの問題点は、子どもから子どもらしい日常を奪い、子どもが自らの未来や可能性を失ってしまうことであり、このような事態は何としても避けなければなりません。

 

 また、社会的な認知度も低いことから、周囲の大人のみならず子ども自身やその家族でさえも自覚がなく、誰にも頼らないことが当たり前の日常になってしまっている。このことも大きな課題であります。

 

 子どもの成長は早く、まずは支援を早急に実行することが重要であり、できるところから一刻も早くアクションを起こしていくことが、今まさに求められていると考えています。

 

 このため県で、は、県民の皆様や支援者などの認知度や支援能力の向上に向けて、講演会や研修会を開催するとともに、子どもたちに気づきを与え、相談、そして支援へとつなげていくための啓発動画の作成や、スクールソーシヤルワー力一の相談体制の強化などを図ることとしました。

 

 一方で、ヤングケアラーの家庭には、高齢者や障害者の介護や、貧困などの多岐にわたる背景があることも多いため、こうした家庭への寄り添った支援も不可欠であると考えています。

 

 このため、今月16日には、新たに介護や福祉、医療、教育などの支援関係者からなるヤングケアラー支援ネットワーク会議を設置したところであり、議員御提案の関係機関が連携する包括的な支援体制の構築に向けて、議論を加速して参ります。

 

 今後も、子どもやその家族に対して寄り添った支援を提供できるよう更なる支援策の検討を進め、実効性ある取り組みを全力で推進して参ります。


7.若者が魅力を感じる産業の集積と育成について

 我が国の人口が減少局面にある中、全人口の約三割に相当する三千六百七十三万人が東京圏に集中し、年間の転入超過者数は二十歳前後の層を中心に十五万人にのぼっております。

 

 東京圏に隣接する本県は、こうした影響を強く受けており、若年世代の東京圏を目指した県外転出が進み、とりわけ、女性においてその傾向がより強い状況にあります。

 

 転出する理由としては、物の豊富さ、交通の利便性、自由度の高さなど大都市としての魅力もありますが、就職先の選択肢が豊富であることが最大の要因であると考えます。

 

 一方、昨年から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は、持続可能な社会への関心の高まりや、これまでの効率性重視の一極集中から安心安全重視の多極分散への変化、デジタル化の加速度的な進展をもたらし、企業経営にも大きな影響を与えています。

 

 国の調査によれば、東京に本社を置く企業のうち八割以上の企業がテレワークを導入し、四分の一の企業が本社部門の移転又は縮小を検討しており、既に、地方への移転を進める動きも見られるようになってきています。

 

 こうした時代の潮流の大きな変化をまたとないチャンスと捉え、若者が働きたくなるような魅力あふれる企業を誘致することで、若者の県内からの流出抑制と県外からのUIターンの促進につながることが期待できます。

 

 また、起業・創業を促進することにより、今までにない新しいタイプの企業や産業を育成し、若者を惹きつけられるような就労の場を創出することも、若年層の転出超過の抑止には効果があるのではないかと考えます。

 

 本県は、東京圏に隣接しながらも豊かな自然を有していることに加え、先月には中部横断自動車道が全線開通し、近い将来にはリニア中央新幹線の開業が予定されるなど、他県にはない大きな強みをもっております。

 

 こうした本県の強みを活かして、若者が魅力を感じる産業を集積・育成し、将来の山梨を担う若者の県外流出を防ぎ、本県経済の発展につなげていくべきと考えますが、県のご所見を伺います。

(長崎知事)

 本県の人口動態の特徴は、議員御指摘のとおり、若年層、とりわけ20歳から24歳までの就職期の女性の転出超過が顕著なことであります。

 

 本県が将来にわたり活力を維持、発展させていくためには、こうした方々をつなぎとめ、また県外からの流入を促すことが必要です。

 

 この県政上の重要課題に対して取り組むべきは、「県内に希望する就職先がない」といった声に正面から向き合い、若者にとっての「憧れの職』が豊富に用意され、若年世代が描くキャリアビジョンにしっかりと応えていける山梨県へと成長を遂げていくことであると考えます。

 

 具体的には、議員御指摘のとおり、本県の強みである地理的優位性や飛躍的に向上する交通環境などを十分に生かすこととし、まずは、首都圏に加え東海・関西も幅広く視野に入れながら、魅力ある企業の誘致を積極的に進めて参ります。

 

 また、新新な発想を持つ若者の本県での起業を促進する施策や、成長性豊かなスタートアップへの実証実験のフィールド提供とオール山梨による懇切丁寧な伴走支援など、本県独自の特徴ある事業を展開し、感度が高く野心ある世代から「起業やスタートアップに有利な山梨」との定評を得たいと考えております。

 

 更には、時流に乗り将来有望で、かつ、本県が得意とする、水素・燃料電池や医療機器といった先端的産業分野を一層発展させ、気が付かないだけで実は身近に沢山ある、本県の素晴らしい企業への就職、定着を進めることといたします。

 

 一方、こうした取り組みに加え、既存のあらゆる県内産業につきましても、現状に甘んじることなく高付加価値化の努力を促し、若者が魅力を感じられる産業へと脱皮を図ることが、本県産業を持続可能なものとしていくための王道だと考えます。

 

 そこで、観光産業などのサービス業におきましては、労働集約的で業務負荷が過重といった若者が定着しにくい要素を払拭するため、サービスの高付加価値化と薄利多売からの脱却を促すとともに、企業内の働き方改革や女性活躍を推進し、ハイグレードで憧れの的となるような業種への発展を促して参ります。

 

 また、基幹産業の一つである農業においても、オリジナル品種や新たなブランドによる付加価値の向上、スマート農業の導入による省力化等で収益性を高め、豊かな自然の中で生き生きと働ける、山梨ならではの魅力ある産業となるよう取り組みを進めて参ります。

 

 こうした取り組みにより、県内産業全体の底上げを図り、ハイクオリティな産業群が緒羅星のごとく輝く山梨県、そして、若者から「夢を描く舞台」として選ばれる山梨県を実現して参ります。


8.反転攻勢に向けた県産酒の消費拡大とブランド力の向上について

  この夏、首都圏に発出された緊急事態宣言の影響で観光客等は激減し、県産酒の消費量は著しく低迷することとなりました。

 

 その上、本県に対しても八月二十日からまん延防止等重点措置が適用され、さらなる人流の制限が加わった結果、県内のワイナリーや酒蔵など酒類製造業界は、これまでにないほどの苦しい状況が続いています。

 

 私の地元、甲州市は日本ワインのメッカであり、例年であれば、ワイナリーにとって、ブドウの収穫を喜び、新酒への期待感に胸躍らせるこの時期、昨年からの在庫を大量に抱え、売り先に悩む生産者の悲痛な声が、私のもとにも届いております。

 

 これは、観光客や飲食店を販路としてきた酒類製造業の皆さんにとって同様の苦境であり、日本酒の酒蔵からも、新米の収穫、新酒の仕込みを前に、先行きへの不安の声が聞かれます。

 

 古来、お酒は地域の風土の中で育まれ、その土地の人々に楽しまれてきたものであります。

 

 だからこそ、日本国内のみならず、世界中が同じような状況にある今回のパンデミック下においては、その土地の人が、その土地のお酒を消費することが、生産者にとって大きな助けになるのではないかと感じています。

 

 本県には、ワイナリー数日本一のワイン、地域ごとに特徴のある日本酒をはじめ、ウイスキー、ビール、焼酎などたくさんの美味しいお酒があります。

 

 私も晩酌の際には、お酒を変えながらついつい杯を重ねてしまうことがありますが、県産酒の消費拡大を図るためには、まずは地元の山梨県民が、地元のお酒を大いに楽しみ、その美味しさを自慢するような機運を醸成していくことが必要と考えます。

 

 一方、このような感染状況が続き、お酒の売り上げが落ち込んでいる今を、将来の反転攻勢に備える期間と捉える前向きなマインドも必要になってきます。

 

 本県は平成二十五年に、ワインにおける地理的表示、いわゆるGI山梨の指定をワインとしては国内で初めて受けており、これに加えて、本年四月には、日本酒の産地としても指定を受けたことにより、全国で初めて二つのGIを持つ県となりましたので、この強みを活かすことでブランド力向上につなげられるのではないかと考えます。

 

 そこで、コロナ収束後に向けて、県民による県産酒の地元消費の拡大と、二つのGIを活かした県産酒のブランド力向上にどのように取り組んでいくのか、御所見を伺います。

(長崎知事)

 本県では、全国で初めて2つのGIの指定を受けましたが、他産地との差別化を図ることができるGIの強みを十分に生かして、県産酒の消費拡大とブランド力向上につなげていきたいと考えております。

 

 まず、消費拡大の取り組みに先立ち、酒類提供の制限により、多大な影響を受けた酒類販売事業者への緊急的な支援策として、国の月次支援金に上乗せ、文は対象を拡大し支援金を給付いたします。

 

 その上で、消費拡大については、GI認証銘柄を主としたショッピングモールでの販売会やインターネットを活用した販売促進キャンペーンなどを実施し、県内外で県産酒の売上げの増大を図ります。

 

 更に、県産食材を活用した付加価値の高い料理を創作し、ワインや日本酒などとのマリアージュによる本県ならではの食の魅力を発信するなど、食との融合による県産酒の消費拡大につなげて参ります。

 

 次に、ブランド力向上については、地域プロモーション戦略の下、コーポレートブランドたる「ハイクオリティやまなし」と、それを構成する日本酒やワインなどのファミリーブランドを連動させることで相乗効果を図るなど、戦略的な取り組みを進めております。

 

 このうち日本酒については、首都圏の高級ホテルを対象とした試飲会で、本県日本酒の多様な味わいや、これを生み出す水系などGI指定の背景にある物語をPRし、銘醸地としての認知度を高めて参ります。

 

 また、ワインについては、産地組合が行うロンドンプロモーションを支援してきた結果、国際的な認知度が高まってきているため、この取り組みを継続し、甲州ワインブランドの海外での更なる浸透を図ります。

 

 今後も、県産酒の消費拡大とブランド力向上の取り組みを強力に進め、酒類製造業のリ力バリ一、その先の跳躍に向けて弾みをつけて参ります。


9.コロナ禍における文化芸術活動の振興について

 昨年は、新型コロナウイルス感染症が国内で猛威を振るい始めたことにより、県内の美術館や博物館をはじめ、多くの文化施設が休館したほか、ほとんどのイベントや行事などが中止や延期を余儀なくされました。

 

 今年に入り、感染拡大状況は一進一退となっておりましたが、感染力が強く、重症化リスクが高いと言われる変異ウイルス「デルタ株」がまん延した八月上旬からは、休業、もしくは時間短縮や無観客での開催となっており、コロナ禍において文化芸術活動を継続する難しさが、改めて浮き彫りになりました。

 

 山梨県文化芸術基本条例の前文には、文化芸術活動は、人が自分らしく豊かに生きるために極めて大切なものであり、文化芸術は人と人とをつなぐ架け橋となり、和やかで潤いのある社会生活を実現するために重要なよりどころとなるものと謳われております。

 

 また、新型コロナウイルスが世界各国の文化芸術活動に影を落としていた昨年五月、ドイツのメルケル首相は、市民などに向けた演説の中で、芸術や文化はドイツにとって大変重要であり、連邦政府は芸術支援を最優先するとして、文化重視の姿勢を明確に打ち出し、世界の人々に、文化芸術が私たちの生活に不可欠なものであることを、改めて気づかせてくれました。

 

 コロナ禍において人と人の交流が制限される傾向にあるからこそ、人と人とをつなぐ架け橋であるべき文化芸術の重要性が一層増しているのであり、文化芸術活動は決して、不要不急な存在ではないと考えます。

 

 外出の自粛やイベントなどの開催制限により、県民が文化芸術を鑑賞し、あるいは、自ら活動に携わる機会、児童生徒が文化芸術に親しむ機会などが奪われている現状に、私は、基本条例の理念が脅かされているのではないかという強い危機感を抱いています。

 

 そこで、本県における文化芸術の灯を絶やすことのないよう、また、コロナ禍ですさみがちな県民の心に潤いを与えることができるよう、今こそ県民の文化芸術活動に対する支援に積極的に取り組む必要があると考えますが、県のご所見を伺います。

(長崎知事)

 新型コロナウイルスの感染拡大の中で、先般、イベント開催の自粛要請や、県立美術館をはじめとした文化関連施設を休館せざるを得なかったことは、非常に残念なことでありました。

 

 文化芸術は、私たちの日常をより豊かにし安らぎと活力をもたらすものであり、議員御指摘のとおり、コロナ禍により閉塞感が漂う今こそ、県民には文化芸術の力が必要であると考えています。

 

 そこで、県内各地で文化芸術活動の振興を図るため開催する県民文化祭において、できるだけ多くの皆様が文化活動の発表・鑑賞ができるよう、様々なプログラムの再開に向けた準備を鋭意進めているところであります。

 

 また、多くの県民が外出自粛やイベント制限により、活動や発表の機会を奪われたことに伴い、県民の文化芸術活動を支えてきた地域拠点の存続にも大きな影響が生じてきております。

 

 このため、ライフ、ハウスなど地域の小規模な文化活動拠点が行う、感染対策が講じられた場所やオンライン、野外などの新しい生活様式に対応したイベントの開催を支援して再び活性化させることとし、所要の経費を9月補正予算に計上しました。

 

 更に、県立文化施設におきましては、館内観覧の疑似体験ができる動画の公開や、館の魅力を学芸員が解説するナイトミュージアムの実施など、県民の皆様に寄り添った展示や企画を検討しております。

 

 こうした取り組みに加えて、文化芸術をコロナ禍からの県民生活の再建や県内経済の再生につなげるだけではなく、その取り組みを端緒としながら、中長期的に文化芸術により本県を活性化する、いわば「文化立県』を目指すこととし、その実現に向けた戦略を策定の上、本格的に取り組んで参りたいと考えております。


10.果樹農業の更なる振興について

 本県の果樹農業は、昭和三十年代後半の米麦養蚕から果樹農業への転換を期に急速に拡大し、先人から引き継がれた匠の技術を継承しながら、果樹王国やまなしが築き上げられ、ぶどう、もも、すももは、日本一の生産量を誇っております。

 

 私の地元甲州市においても、日本一の生産量を支える産地として農家の方々のご努力により高品質なぶどう、もも、すももなどが全国に向け出荷され、先般、知事が記者発表した農業生産額一千億円への回復の一翼を担ったものと感じています。

 

 しかしながら、近年、果樹の生産現場においては、農業従事者の高齢化や担い手の不足などが進行し、果樹の生産量が減少しているとともに、圃場の形状が不整形で作業性の悪い園がまだ見受けられております。

 

 現在、全国の果樹産地において、ぶどうのシャインマスカットが増植され、産地間競争が激化する中、農家の所得向上を目指すためには、生産安定や品質向上とともに、県産果実の高付加価値化の取り組みが重要となってきております。

 

 本県においては、知事のリーダーシップのもと、果樹園で発生する剪定枝を炭にして土壌に還元し、土壌に炭素を貯留することにより、地球温暖化の抑制に資する4パーミル・イニシアチブの取り組みを全国に先駆けて推進しております。

 

 他に例のない高付加価値化への取り組みが始まったことを高く評価するものでありますが、今後は、4パーミル・イニシアチブが広く理解され、県産果実の購入へつながるようバイヤーや消費者へのPRが必要になると考えます。

 

 また、農産物に新たな付加価値を生み出す別の取り組みとして農業の六次産業化があります。

 

 特に、本県を代表する果実を利用した農産加工品は、高品質な県産果実の魅力を更に高めた逸品として六次産業化の成功モデルになるものと確信しており、商品開発などに対する農業者等への支援が求められています。

 

 更に、今後、次代に受け継ぐ果樹産地の維持・発展を図るためには、農家所得を向上する高付加価値化などの取り組みに加え、新規就農者の確保・育成や担い手への農地集積の促進とともに、生産性の向上を可能とする基盤整備を推進することも重要であると考えております。

 

 そこで、本県果樹農業の更なる振興に向けどのように取り組むのか、県のご所見を伺います。

(長崎知事)

 本県農業の基幹である果樹農業を次世代に受け継いでいくためには、担い手の確保・育成や生産基盤の強化に加え、果実の高付加価値化を推進することが重要であります。

 

 このため、県では、果樹産地への新規就農者の定着に向けた技術習得の支援とともに、意欲ある担い手に農地を集積するため、小規模で、分散した果樹園を集約し、生産性を向上させる基盤整備を進めております。

 

 また、県産果実の品質向上や生産安定に向け、品質の高い県オリジナル品種等への改植の推進や栽培技術の普及に加え、病害の発生を軽減するため、甲州市などの農家に対し、ぶどうの雨よけ資材等を助成する経費を9月補正予算に計上したところです。

 

 更に、県産果実の付加価値を高めるため4パーミル・イニシアチブを推進しており、本年度、認証制度を構築し消費者の理解を得るためのPR動画を作成したほか、市場調査を行い販売先となるターゲットを明らかにした上で有利販売につなげて参ります。

 

 加えて、6次産業化による高付加価値化を目指すベく、専門家の指導により、シャインマスカットのドライフルーツを用いたフルーツハーブティーや菓子等の加工品開発に取り組む農家を支援しております。

 

 今後も、市町村やJA等と連携を図りつつ、こうした取り組みを積極的に進め、農家の所得向上と果樹農業の更なる振興に鋭意努めて参ります。


11.災害に強い広域的な道路ネットワーク整備について

 本県においては、東西方向の中央自動車道と、南北方向の中部横断自動車道を軸として、国道二十号や五十二号などがこれを補完し、県外との交流や連携を支えております。

 

 こうした骨格道路網は、県民生活を安定的に維持する生命線であり、産業の集積や物流の促進、観光振興などのあらゆる面で本県の発展を下支えする、極めて重要な存在であります。

 

 特に、東京・横浜港を利用する貨物輸送量のシェアの大きさや、東部地域における中央自動車道の慢性的な渋滞状況を見ても、首都圏方面への物流・人流の大動脈としての道路の重要性は言を俟ちません。

 

 また、防災面での道路ネットワークの機能強化も重要であります。

 

 近年、気候変動の影響により各地で大規模な自然災害が相次いでおり、本年八月には、線状降水帯を伴う活発な前線の停滞が記録的な豪雨をもたらし、全国の広い範囲で土砂崩れや河川の氾濫、道路の崩壊が発生しました。

 

 本県においても例外ではなく、令和元年の台風十九号では、中央自動車道や国道二十号などの骨格道路が同時に被災し、首都圏との連絡が約一週間にわたり寸断され、人流や物流に甚大な被害をもたらしたことは、まだ記憶に新しいところであります。

 

 こうした中、本年四月に須走道路・御殿場バイパスが開通し、また、先月に中部横断自動車道の静岡・山梨間が開通したことで、災害時における広域迂回路が二ルート確保されたことは、道路ネットワークの強靱化に向けた大きな前進であると考えます。

 

 災害の激甚化の傾向が強まる中、首都圏に大きく依存する本県にとって、発災時の孤立を防ぎ、被災後の速やかな復旧・復興を図るためにも、首都圏とつながる道路ネットワークを一層強化することは最重要事項であると考えます。

 

 そこで、県では、災害に強い広域的な道路ネットワークの整備をどのように進めていくのか伺います。

(長崎知事)

 急峻な山々に固まれた本県において、災害に強い道路ネットワークの確保には、災害危険性の高い脆弱箇所の対策と、広域迂回路となる信頼性の高いネットワーク整備の取り組みが必要です。

 

 特に交通量が多く強靭化が重要である首都圏方面においては、令和元年台風19号によって交通途絶したことから、交通強靭化プロジェクトを設立し、関係機関と連携して取り組んでおります。

 

 まず、首都圏と本県を直接結ぶ中央自動車道では、脆弱な県境の山間部において、小仏トンネルの別線トンネル整備や、法面の補強工事を行っております。

 

 また、中央道や国道20号が被災した際に迂回路となる国道413号においては、道志バイパスの整備とともに、集中的に防災工事を実施し、本年7月に事前通行規制を撤廃したところであり、県管理道路の強靭化にも努めております。

 

 更に、首都圏への広域迂回路となる須走道路・御殿場バイパスや、中部横断自動車道山梨・静岡聞が開通したことによって、南回りの広域道路ネットワーク整備が飛躍的に前進しました。

 

 一方で、首都直下地震の発生時には、首都圏への支援や迂回が必要となりますが、東名高速、中央道が被災した場合は、中部横断道を利用した北関東へのルート確保が必要となります。

 

 このため、県内に残る唯一のミッシングリンクである中部横断道長坂・八千穂聞の整備が不可欠であり、都市計画決定の手続きを着実に進め、早期事業化を目指して参ります。

 

 今後も、計画的な広域道路ネットワーク整備の推進に向けて、県議会の皆様の御支援をいただきながら、継続的かつ安定的な強靭化予算の確保を国に働きかけて参ります。


12.やまなしパワーPlusについて

 県では、平成二十八年四月から、東京電力と共同して、県が発電した電力を東京電力に売電し、東京電力が「やまなしパワー」のブランド名で県内企業等に安価な電力の供給を行う事業を開始し、平成三十一年四月からは、「やまなしパワーPlus」として事業を行ってきました。

 

 この「やまなしパワーPlus」では、新規立地企業等に対して安価な電力を供給することで企業立地の促進に寄与し、CO2フリーの電力の地産地消による温暖化ガスの排出抑制など環境負荷の低減を図る「ふるさと水力プラン」をも運用しており、複数の政策効果を兼ね備える優れた施策と評価しております。

 

 一方、現在の電力市場では、新規電力会社数が約七百三十社にまで拡大し、競争が激化しており、電力自由化の動向が「やまなしパワーPlus」にどのような影響を及ぼしているのか、大変気になるところです。

 

 また、政府の目指す「二〇五〇年カーボンニュートラル」、「脱炭素社会の実現」に向けて、水力発電や太陽光発電などCO2フリーの電力への関心もこれまで以上に高まっており、電力市場においても発電する電力の環境価値に注目が集まっているほか、事業運営に必要な電力を百パーセント再生可能エネルギーで賄うという取り組みが、今後は企業全体に広がることが予想されるなど、電力取引を取り巻く状況も大きく変化してきております。

 

 そこで、まず、このような状況の下で「やまなしパワーPlus」がこれまでに上げてきた成果について伺います。

 

 また、「やまなしパワーPlus」の事業期間は本年度末で満了すると承知しておりますが、県内の利用企業からは、事業の継続に加え、事業内容の充実を求める声も大きいと聞いており、県では、来年度以降の事業展開についてどのように考えているのか、併せてご所見を伺います。

(長崎知事)

 まず、やまなしパワーPlus (プラス)のこれまでの成果についてであります。

 

 企業等への安価な電力の供給による県内経済の活性化と、C02削減に取り組む企業を支援することを目的に創設した「やまなしパワーPlus」は、本年度末で3年間の事業期間の満了を迎えます。

 

 現在、408箇所へ、年間約2億4千万キロワットアワーの電力量を供給しており、順調な運営を続けているところであります。

 

 供給先を対象としたアンケート調査では、約3割の企業が電気料金の低減分を設備投資につなげ、約6割が今後、設備投資や雇用増加につなげたいとの回答がありました。

 

 また、C02排出量削減についても、8割の企業から環境活動への取り組みに対し、効果があったとの評価をいただいていることから、県内経済の活性化と脱炭素社会の実現にも着実に寄与しているものと考えております。

 

 次に、来年度以降の事業展開についてでありますが、引き続き企業活動を後押しし、県内経済の活性化とC02の排出量削減を図るため、来年4月から2年間、「やまなしパワーNEXT (ネクスト)」として現行の事業を更に充実させた上で、実施していくことといたしました。

 

 この新しい事業では、電力量料金の割引率を、新規立地・経営拡大企業について、現行の7%から10%に引き上げ、料金負担の一層の軽減を図って参ります。

 

 また、新型コロナウイルスで大きな影響を受けた、医療・福祉、小売業、飲食庖、生活関連サービス業を新たに対象に加え、これらの業種の支援につなげて参ります。

 

 更に、2050年カーボンニュートラル宣言を受け、C02フリー電力の導入に対する企業の関心が更なる高まりを見せております。

 

 そこで、こうした追い風を生かすため、県営水力発電所で発電した電力を100%供給する「ふるさと水力プラン」の供給枠を現行から5倍の5千万キロワットアワーに拡大するなどの工夫を加え、脱炭素社会の実現とともに本県の経済的な利益の確保にも、より一層貢献して参りたいと考えております。

 

 今後も、この事業を通じて力強く企業活動を支援するとともに、事業の実施に伴う利益については、少人数学級の推進や子育て支援、環境保全などに幅広く活用し、県民福祉の向上に役立てて参ります。


13.県立高校におけるICT教育に係るBYODの導入について

 将来、社会人としてソサエティ5・0の社会で活躍していくためには、学校における学習用端末などのICT環境を整備して、子どもたちが日常的にICTに触れることができる学習環境を実現することが重要であります。

 

 国のGIGAスクール構想により、全ての公立小中学校に高速ネットワークと一人一台端末が整備され、子どもたちの可能性を引き出すことができる学習環境が整いつつあります。

 

 先日、多くの小中学校においてICTを活用した学習に取り組んでいるとの新聞報道がありましたが、今後は、全ての学校で一人一台端末を活用しながら創意工夫を凝らした教育活動が展開されていくことを、大いに期待しているところであります。

 

 さて、知事は、昨年の九月議会におきまして、県立高校の一人一台環境の実現に向けて、令和四年度の新入生から、個人が所有する端末を活用するいわゆるBYODを、順次導入することを表明されました。

 

 これにより、中学校まで一人一台端末の環境で学んできた子どもたちが、県立高校進学後も引き続き一人一台端末の環境で学習することができるようになることから、私としても知事の表明に賛同したところであります。

 

 その一方で、保護者が端末を用意する必要があることから、保護者の高校入学時の負担が増えることになり、この点について懸念しております。

 

 特に経済的に余裕のない世帯については、端末を準備することが難しいと思われることから、こうした世帯の生徒も安心して学校生活を過ごせるようにするために、端末の準備に向けた県による何らかの支援が必要であると考えます。

 

 また、来年度に高校進学を予定している、現在の中学三年生の保護者にとっては、来年度から始まるBYODについて御存知でない保護者が大半かと思います。準備する端末について、どのような端末を、いつ準備すれば良いのかなど、BYODの詳細についての関心は高いものと考えます。

 

 そのため、現在の中学三年生の保護者に対しては、このBYODについて早急かつ丁寧に説明していただきたいと思います。

 

 そこで、県立学校におけるICT教育を推進するために、来年度から導入する県立高校のBYODについて、保護者への説明方法を含めた現在の検討状況を伺います。

(教育長)

 ICTはこれからの学校教育に必要不可欠なものであり、未来の山梨を担う子どもたちが、日常的にICTを活用できる学習環境を実現することは極めて重要であります。

 

 このため県では、来年度の県立高校の新入生から、個人所有の端末を活用する、いわゆるBYODを順次導入することとし、授業中のみならず放課後や家庭など、授業以外の学習においても端末を使えるようにして参ります。

 

 現在、BYODの導入に向けて、端末のスペックや08、学校で接続する際の環境設定など、詳細について詰めているところであります。

 

 また、端末の購入を希望する保護者に向けては、インターネット上で通常よりも安価に購入できる仕組みについても検討を行っております。

 

 更に、保護者に端末を用意してもらうに当たっては、議員御指摘のとおり、経済的に余裕のない世帯に対する支援策を講じて参りたいと考えております。

 

 県としましては、来年度のBYODの導入に向けて、早急に詳細を詰めるとともに、保護者の皆様に対しては、県や高校のホームページでの周知や中学校を通したリーフレットの配布などにより、丁寧に説明して参ります。


14.山岳遭難の発生状況と防止対策について

 本県は、富士山、北岳、間ノ岳などの日本の最高峰から、美しい自然景観が望める低山まで、数多くの山々を抱える国内有数の山岳県であり、年間を通して多くの登山客が訪れております。

 

 特に、ウィズコロナの社会においては、感染リスクを回避しながらアウトドアでレジャーを楽しみたいとの志向が強まることは確実であり、今後も多くの登山客が本県を訪れるものと思います。

 

 こうした中、本年六月末までの上半期における県内の山岳遭難の発生状況は、昨年に比べ発生件数・遭難者数ともに増加しており、峡東地域の山々におきましても同様に遭難が増えていると聞いております。

 

 加えて、昨年の秋には、十月以降に遭難が急増したため、十一月には緊急の街頭指導が行われたと承知しております。

 

 山岳遭難は、必ずしも急峻な山々だけでなく、身近な低山でも発生しており、時には命に危険が及ぶこともあります。楽しい活動であるはずの登山が痛ましい遭難事故に暗転しますと、遭難者本人はもとより、その御家族も絶望の淵に突き落とされることになってしまいます。

 

 また、救助に当たる警察官は、山中の厳しい環境の下、自らの危険を顧みず救助活動に従事することとなり、その心身の負担は察するに余りあります。

 

 こうした不幸な山岳遭難を未然に防ぎ、登山を安全に楽しんでいただくためには、県警察、県及び市町村が連携を図りながら、登山に関する基本的な注意事項、山岳遭難の発生実態やリスク、更には登山計画書の提出など、登山に関する情報について、県内外に対し効果的に発信していくことが重要と考えます。

 

 また、こうした対策を進めていくに際しては、登山に関わる山岳会等の関係機関・団体などとも一体となった取り組みが必要であります。

 

 そこで、本県における山岳遭難の発生状況と併せ、山岳遭難防止に向けた県警察のこれまでの取組状況及び今後の対策について伺います。

(警察本部長)

 議員御指摘のとおり、本県は圏内有数の山岳県であり、山岳遭難防止のための取り組みは、極めて重要であると認識しております。

 

 県内における山岳遭難の発生状況は、本年8月末現在で、66件、76人と、件数、遭難者数ともに前年同期と比べ増加しております。

 

 原因別では、約3割が道迷いと最も多く、居住地別では、遭難者の約8割が隣接都県からの登山者であることから、県警察では、道迷い対策と県外登山者対策に重点を置いた取り組みを進めております。

 

 具体的には、道迷い対策として、県や市町村、山岳会等と連携して、案内板の設置や危険箇所への立入禁止措置等の登山道整備を推進しております。

 

 また、県外登山者への対策として、県外に庖舗を構える登山用品庖や、山岳ガイド等の山岳関係者の協力を得ながら、山岳連難の発生状況やリスク、登山計画書の提出などの登山に関する注意事項について、登山情報サイトやツイッターなどのSNSを活用した情報発信に努めております。

 

 更に、山岳遭難発生時における捜索・救助活動を迅速的確に実施するため、警察本部及び全ての警察署に山岳救助隊員を配置し、訓練等を通じた技能向上に努めております。

 

 引き続き、本県における登山の安全を確保するため、登山道整備や情報発信など、山岳遭難防止対策を強化して参ります。


(以上)