未来ある山梨の子供たちのために!!

山梨県議会(令和5年9月定例会)・代表質問

1.人口減少危機対策について

  経済的な不安定さ、子育ての負担感、出産・育児・仕事の両立の難しさなど様々な要因により、若者達が将来を不安に感じ、結婚や子どもを持つことを必要以上に悲観的に捉えてしまうことが少子化に繋がっている。人口減少危機対策を進めるに当たっては、結婚や子どもを持つことへの不安を取り除き、子育て世代が希望を持って生き生きと生活できるような社会の実現に向け取り組むことが重要である。そこで、県は、人口減少に対しどのように取り組むのか伺う。

(長崎知事)

  人口減少という危機を突破するためには、県民へ希望に満ちた選択肢を提示し、将来世代を含めた、県民一人ひとりが豊かさを実感できるやまなしの実現に向け、取り組みを加速させなければなりません。それには、子供を産み育てるための生活基盤を強く安心できるものとするふるさと強靱化、また、若者や子供たちの可能性を広げる開の国づくりを目指す施策の充実・強化が不可欠であります。このため、あらゆる施策を総動員し、それぞれのライフステージにおいて、切れ目のない支援を実現する必要があります。

 

 このような観点から、本県における対策の核となる政策パッケージの暫定プランを取りまとめたところです。この暫定プランに基づきまして、人口減少危機対策の取り組みを行う市町村への支援、労働環境改善に向けた関係者との協議などの取り組みを強力に進めてまいります。

 

 さらに、国家的課題である人口減少対策は、国との連携が不可欠です。今般、山崎史郎内閣官房参与ら専門家グループとともに、各種少子化対策が出生率向上に与える影響を検証していく方針で一致いたしました。これまでの施策の効果検証も踏まえ、本県が全国に先駆けて、さまざまな施策を実行し、結果を全国に還元していくなど、国の政策動向と一体となり取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 

 また、人口減少危機対策は、長期的に困難かつ複雑な社会的課題に取り組むためのものであります。このため、効果的な施策の立案には、まずは出生率上昇の阻害要因などを十分に調査研究することが重要です。

 

 九月補正予算におきましては、本県の人口減少危機対策を本格的に確立し、実行していくための初めの一歩として、人口減少危機対策基礎調査に要する経費を計上いたしました。一方、すぐに始められる取り組みにつきましては、調査結果を待たずに、積極的に取り組むこととしております。

 

 今般提出した事業につきましては、市町村や民間と連携したモデルケースを創出するものであり、今後、効率的に県内全域へ波及させてまいります。

 

 さらに、知事直轄の組織として、新たに人口減少危機対策本部事務局を設置いたします。ここを核として、人口減少危機対策を全庁部局横断的に有機的連携を強力に確保しながら取り組みを継続的に推進してまいります。


2.国民スポーツ大会並びに全国障害者スポーツ大会の開催に向けた取り組みについて

  9月補正予算において、準備委員会の設置に係る予算が計上されているが、知事が目指す全国に先駆けた山梨らしい大会を実現するためには、準備段階から県の総力を結集し、最高のパフォーマンスを発揮できる体制が必要である。そこで、今後設置される準備委員会について、どのような考えで組織し、運営していくのか所見を伺う。

 

 県では未来のトップアスリートを発掘する「甲斐人の一撃」事業に取り組んでいるが、本事業は全国レベルのみならず、国際的に活躍できるスポーツ人材の育成を見据えたものであり、本事業の成果が今後の本県の競技力向上に繋がっていくと考える。そこで、本事業の現在の進捗状況と今後どのように競技力向上の取り組みを展開していくのか所見を伺う。

(長崎知事)

  まず、準備委員会の組織・運営についてです。

 

 両大会は、県民の健康増進や地方スポーツの振興などに大きく寄与するものであります。他方で、巨額の経費負担が全国共通の大きな課題となっております。このままでは三巡目の大会開催は困難との声も耳にするところです。

 

 このような状況に一石を投じ、人口や財政規模を問わず開催をすることが可能な持続可能な新たな大会モデルを確立すべく、積極果敢に挑戦していく所存です。

 

 この挑戦に市町村、競技団体のみならず、経済界や教育機関、福祉団体や医療団体など幅広い分野の方々に準備委員会に御参画をいただき、オール山梨で集合知を発揮してまいります。山梨から大会のスタイルが大きく変わった、あるいは、後世に残る斬新な大会になったと言われるような将来のモデルとなる大会を目指し、準備を進めてまいります。

 

 次に、競技力向上の取り組みについてです。

 

 全国大会や国際大会における本県選手の活躍は、県民に感動や勇気を与え、県民みずからの挑戦意欲の後押しになることも期待されます。そのため競技力の向上は不可欠であると考えております。

 

 この競技力の向上には、筋力、瞬発力、敏捷性など、すぐれた基礎体力を持つ子供たちを対象に、早期に競技への適性を見きわめることが重要です。甲斐人の一撃事業では、一定の基礎体力を有する小学校五年生、六年生の児童を対象に、二年間で十種目の競技を体験し適性を判断することとしております。現在、そのうち四種目の実技体験が終了したところであります。

 

 今後は、競技団体と連携した選手の強化策につなげ、競技力を実践的に伸ばした子供たちが成人となる九年後の大会におきまして、本県を担う中心選手として活躍できるよう努めてまいります。


3.富士山火山防災対策について

  6月14日に改正された活動火山対策特別措置法では、火山の調査研究を一元的に行う火山調査研究推進本部の設置や、国と地方が連携して火山の専門人材の育成確保に取り組むことなどが新たに規定された。今後、県民の命はもちろんのこと、暮らしをも守るとの観点から、改正法を踏まえ、火山防災対策をさらに強化していくことが大事である。そこで、活火山法の改正を受けた県の対応と、今後、火山防災対策をどのように強化していくのか、その取り組みについて伺う。

(長崎知事)

 まず、活火山法の改正を受けた県の対応についてです。

 

 法改正の実現は、火山防災強化推進都道県連盟を立ち上げた大きな目的であり、火山防災対策に関する国の本格的なコミットメントを獲得できたことにより、大きな一歩を踏み出したものと考えております。

 

 また、大規模噴火時の県境を越える広域避難につきましても、国の関与を求めてまいりました。この点につきましても、法改正の議論の中でしっかりと整理をいただいたことから、国とともに図上訓練などを通じた課題の抽出について協議を進めております。

 

 法改正を受け、県では、改正後の推進体制を速やかに整備すべく、七月に都道県連盟の総会を開催しました。この総会では、火山の専門的人材は、住民の命と暮らしを守るために欠かせない公共財であるとの認識のもと、地方としても主体的に継続的な人材確保に連携して取り組んでいくことなどを確認したところです。

 

 その中で、本県が全国に先駆けて採用している火山防災職を他の都道府県知事に紹介をし、その必要性を理解していただきました。その上で八月には、新たに設置される火山調査研究推進本部において、必要かつ十分な人員や予算を確保することなどにつきまして、国に要望してきたところであります。

 

 今後も、国や国会議員の議員連盟、都道県連盟などと連携をしながら、住民や登山者などの安全確保を目的とした法改正の趣旨に基づき、その実現に向けしっかりと取り組んでまいります。

 

 次に、今後の火山防災対策の強化についてです。

 

 昨年三月に策定されました富士山火山避難基本計画に基づく避難体制を一刻も早く構築する必要があります。このため、各市町村が抱える火山防災対策上の課題を抽出し、訓練を通じて解決することで、PDCAサイクルが確立した避難体制の構築を支援してまいります。

 

 さらに、地域住民への徒歩避難の浸透を図るため、動画やリーフレットを活用した広報を行うほか、火山灰の上を歩行する体験事業を開催してまいります。加えて、地域住民や観光客が円滑かつ確実に避難できるよう、AIやアプリを活用した情報発信の手法や通信体制の整備を検討してまいります。

 

 こうした取り組みを通じまして、火山防災の基礎となる富士山を正しく知り、正しく備えることの定着を図り、逃げおくれゼロの実現を目指してまいります。


4.高校生の国際交流について

 実際に海外を訪れる交流に加え、オンラインによる交流も併せて行っていくことにより、より多くの高校生が現地に行かなくても交流に参加することができるようになるなど、交流がより厚みのあるものになっていくと考える。海外との交流により得たかけがえのない経験は、必ずや、本県の若者たちの成長の糧となり、将来の山梨のために活躍してくれることを確信している。そこで、県では、今後の高校生の国際交流についてどのように進めていくのか所見を伺う。

(長崎知事)

 グローバルな時代を生きていく本県の高校生が、世界の扉を開き、多様な背景を持つ人々と交流をし、チャレンジをしていくことは、誰にでも開かれた開の国づくりを進めるに当たり非常に重要であります。このため県では、海外での活躍に意欲ある若い世代を後押しし、本県の高校生に国際交流や国内留学の機会を積極的に提供してまいります。

 

 本年十一月には、韓国・忠清北道の高校生訪問団を本県にお招きをし、県内の高校生と三日間寝食をともにしながら体験活動やディスカッションなどを重ねる実のある交流を行うこととしております。

 

 さらに、来年一月下旬には、本県の高校生がベトナム、クアンビン省を訪問し、現地高校生とお互いの国の文化や自然などについて語り合うなど、密度の濃い交流を行う予定です。

 

 また昨年、包括連携協定を締結したテンプル大学ジャパンキャンパスにおきまして、本県の高校生を対象とした二泊三日の国内留学プログラムを開講することといたしました。

 

 加えて、県立高校がコロナ禍で続けてきた各国とのオンライン交流は、その交流が容易であるだけではなく、訪問前から関係の構築が可能となることから、今後も有効な交流手段として実施してまいります。

 

 こうした取り組みを通して、本県の高校生が国際的な理解を深めて国際感覚を涵養し、将来グローバルな視野で世界を意識して活躍できる人材となるよう、その育成を図ってまいります。


5.包括的な福祉支援について

 甲州市では県内市町村に先駆け、「重層的支援体制整備事業」に令和4年度から着手しており、各制度における既存の相談窓口が連携し、相談者の属性や世代、相談内容に関わらず受け止める体制の構築や、関係機関の協働による支援プランの作成などに取り組んでいる。こうした包括的な支援については、住民の複雑化・複合化する支援ニーズに対応するうえで、非常に効果的であるが、この取り組みを県内全域に広げるため、県として今後どのように取り組むのか、所見を伺う。

(福祉保健部長)

 制度や分野を超えた重複する課題の解決には、既存の相談窓口が連携・協働し、相談や支援を効果的に行う体制を構築する必要があります。このため県では、地域福祉支援計画に基づき、高齢者や障害者、児童の福祉など重複する課題への支援体制を全ての市町村に確立することとしております。

 これまで市町村担当者を対象とした研修会を開催し、他県における支援体制の構築に向けた具体的な取り組みを学ぶことで体制の整備を進めてまいりました。

 

 一方で、支援の現場では、個人や世帯の課題を当事者が自覚しておらず、潜在化してしまうケースや、相談に応じたり支援を行う側の方が、課題の根本的な原因を把握しきれないケースなどがあり、課題を全体的に捉えてかかわることが一層求められております。

 

 そこで、本年度は従来の取り組みに加え、専門家が市町村を個別に訪問し、実情を聞き取りながら、効果的な支援のあり方を助言する事業を創設したところであります。これまでに都留市、山梨市、甲斐市、中央市から、この事業を活用するとの申し出があり、重複する課題への支援体制が県内に広がりつつあります。

 

 こうした取り組みにより全ての市町村に制度や分野を超えた支援体制を確立することで、誰一人取り残さない地域社会を実現してまいります。


6.在宅医療の推進について

 本県は在宅療養支援診療所数が全国平均を大きく下回り、十分な在宅医療の体制が取られていないため、医療機関の参入を今まで以上に進め、医療機関がお互いをフォローできる体制を整備していく必要がある。また、在宅医療の提供に当たっては、患者の自宅を頻繁に訪問し、医療や介護の様々なサービスとの連携を図るなど、幅広く患者や家族をサポートする訪問看護の役割が重要である。そこで、県では今後、在宅医療の推進にどのように取り組んでいくのか、所見を伺う。

(長崎知事)

 高齢化のさらなる進展に伴い、慢性期の医療ニーズの高まりが想定される中、受け皿となる在宅医療の充実を図ることは喫緊の課題となっております。

 

 まず、在宅医療への参入促進につきましては、医療機関から参入の手続や収支見通しなど経営面での助言を求める声が多く寄せられています。

 

 このため、昨年度から意欲の高い医療機関を対象に専門のアドバイザーを派遣し、医療機関ごとの課題を踏まえた伴走型の支援を行っております。これまでに十五の医療機関にアドバイザーを派遣していますが、本年度は想定を上回る派遣希望をいただいております。このため、今回の補正予算において予算額を増額することとしたところであります。

 

 また、議員御指摘のとおり、在宅患者が安心して療養するためには、夜間や容体急変時の体制を確保することが重要です。このため、本年度策定する地域保健医療計画におきまして、地域ごとに二十四時間対応やクリニックの支援などを行う中核的な医療機関を位置づけることとし、現在、関係者と協議を行っております。

 

 さらに、医療ニーズの高い在宅患者の増加に対応するには、地域における訪問看護の充実を図る必要があります。このため、訪問看護ステーションの新規開設を支援する予算を増額し、設置を強力に推進してまいります。

 

 加えて、特定行為研修を修了した看護師など、在宅医療を担う人材の確保・育成を進めることにより、在宅医療提供体制の充実・強化を図ってまいります。


7.「山梨の夏服」の普及に向けた取り組みについて

 「山梨の夏服」は、夏を快適に過ごすための優れたアイテムであり、全国知事会議や県議会などのオフィシャルなシーンはもとより、オフィスや家庭を問わず生活スタイルに合わせて着用することができ、郡内織物の新たな主力製品として、織物産業の可能性を広げるものと大いに期待している。全国知事会議を経て、全国からの視線が集まった今こそ、「山梨の夏服」の普及を強力に推進していくべきと考えるが、県ではどのように取り組んでいくのか伺う。

(長崎知事)

 山梨の夏服は、郡内織物の技術による清涼感あふれるウエアであり、県民に親しまれ、またオフィシャルでも着用できるプロダクトに仕上げてまいりたいと考えております。七月の全国知事会議におきましては、公式ウエアとしてお披露目したところ、各知事の皆様からは、涼しくて非常に快適と大好評でありました。

 

 議員御指摘のとおり、知事会議での好評価を追い風に、織物産業の新たな主力商品として、県内外で広く愛用いただけるよう強力に取り組んでまいります。

 

 まずは、地元関係者や市町村に加え、国中のアパレル関係者や経済団体にも御参画いただく中で、オール山梨の推進協議会を速やかに立ち上げます。この協議会を核としまして、デザインの磨き上げや生地の機能性向上、さらには、量産化や低価格化の実現に向けた商品開発を進めてまいります。並行しまして、親しみのある愛称やロゴの選定、フジテキスタイルウイークなどイベントと連携したプロモーションにより県内外への普及を加速します。

 

 こうした取り組みをオール山梨で進めることにより、山梨の夏服の普及を強力に促進してまいります。


8.県産農産物の輸出拡大について

  県産果実は、近年、海外市場において、国内外の他産地との競争が激しくなっており、人口減少などにより国内市場の縮小が見込まれる中、本県農業を維持・発展させていくためには、引き続き、輸出の拡大に取り組んでいくことが必要不可欠である。また、本県には果実以外にも多くの優れた農産物があることから、これらについても、海外販路を開拓していくことが必要である。今後、県産農産物の輸出拡大に向けて、県はどのように取り組んでいくのか伺う。

(長崎知事)

 議員御指摘のとおり、人口減少などにより国内市場の縮小が見込まれる中、本県農業の維持・発展のためには、輸出の拡大を図っていくことが重要です。このため県では、国内外の他産地との差別化と消費者への効果的な訴求に取り組んでまいります。

 

 まず生産面では、高品質な果実の安定供給を図ってまいります。また、流通面では、品質を保持したまま海外の消費者へ届けられる流通の仕組みを構築し、さらなる差別化を図っていきます。さらに販売面におきましては、匠の技で生産した芸術品とも言われる県産果実の魅力と、それに見合う価格であることを消費者に訴求すべく、引き続き効果的なプロモーションを展開していきます。

 

 さらに、輸出拡大のためには、新たな輸出国を開拓していくことも重要となります。このため、国に対しましては強力に要請を行うとともに、本年五月には私みずからベトナムを訪問してまいりました。その際、現地の最大手の高級果実専門店で本県のブドウの魅力をPRしてまいりました。これを受けまして、先月、その代表者がブドウの栽培状況の視察のため本県を訪れ、今後、解禁後の取引に向けて情報共有をしていくこととなりました。

 

 加えて、果実以外の農産物につきましても、同様に海外への販路を広げていくことが大切であると考えています。本年度、米、牛肉、魚につきまして、アジア諸国などを中心に市場調査を行い、今後の輸出戦略を策定してまいります。

 

 今後とも、県産農産物のブランド価値の向上を図るとともに、輸出国及び輸出品目の拡大に鋭意取り組み、さらなる輸出の拡大を図ってまいります。


9.森林環境譲与税を活用した森林の整備・保全について

 森林環境譲与税はその9割が配分される市町村において多くが基金に積み立てられ、活用が進んでいないことが大きな問題とされている。昨年度は国からも譲与税の多様な活用例が示され、全国市区町村の令和4年度執行率は78%と令和3年度の64%から向上している。本県においても、市町村への指導・相談体制を強化するとともに、昨年度は国の活用例を示しながら市町村に働きかけを行ったが、県内市町村における昨年度の森林環境譲与税の執行状況について伺う。

 現在の森林環境譲与税の譲与基準は、人口の多い都市部に多く配分される仕組みになっており、森林面積の多い山間部の市町村により厚く配分すべきとの意見が山梨県議会を初め多くの自治体から国に届けられ、現在、国では譲与基準の見直しに向けた検討が進められている。このような中、県土面積の8割を森林が占める本県においても、県と市町村が連携した取り組みの加速化が求められている。そこで、森林の整備・保全に向けた取り組みについて伺う。

(長崎知事)

 森林環境譲与税は、市町村が森林整備に係る施策を主体的に行うために交付されております。しかしながら、専門職の不足など市町村の推進体制の構築は課題となっております。

 

 このため県では、県森林協会の相談窓口に県職員を常駐させるなど、支援体制を強化しているところです。加えまして、昨年度は地域の実情に応じた多様な取り組みの実施に向け、市町村とともに必要な検討を進めてきたところであります。

 

 その結果、林道の改修や公共建築物の木造化にも幅広く活用され、令和四年度の執行率は、全国平均を超える八二%となりました。

 

 一方、県内には整備を要する森林が多く存在することから、市町村による対象森林の絞り込みや林道計画の策定がより効率的かつ簡易に進められる環境を整えていくことも大変重要と考えます。

 

 そこで、県では現在、来年度の運用開始に向け、ICT技術を活用した森林クラウドシステムの構築を行っているところです。このシステムによりまして、市町村は画面上で森林管理の履歴や詳細な地形、所有者情報などを随時把握できるようになるため、森林整備に向けた準備作業の加速化が期待されます。

 

 譲与税につきましては、来年度以降、配分額の増加が予定されており、引き続き市町村との連携を密にし、健全な森づくりをさらに進めてまいります。


10.自転車活用推進計画について

 県では、令和元年に策定した「山梨県自転車活用推進計画」を本年4月に改定したところであり、これまで道の駅を初めとした拠点施設でのサイクルスタンドの設置や工具等の貸し出しを初めとした自転車環境の整備、地域の強みや特色を活かした魅力的かつ先進的な自転車のモデルルートの設定など、多くの来訪者を迎え入れるための様々な施策を実施している。そこで、これまでの取り組みを踏まえ、さらに推進させていくことが必要と考えるが、県の所見を伺う。

(長崎知事)

 県では、令和元年に山梨県自転車活用推進計画を策定し、誰もが安全で快適に自転車を活用できる環境の実現を目指して、自転車の走行環境の整備や地域活性化の取り組みを進めているところであります。

 

 これまでに、サイクルツーリズムの推進を図るため、地域の特色を生かしたモデルルートを六つのエリアで設定したところです。本年度は、峡北地域など残る三エリアにつきまして設定を行うこととしております。

 

 また、誰もが安全に通行できる空間を確保するため、矢羽根などの路面標示による環境整備や道路整備に際して路肩幅員を一メートル以上設けることとする本県独自のルールを定めました。

 

 さらに、オリンピックコースやモデルルートの魅力発信や、ふだんは通れない林道を活用したサイクルイベントの開発などに取り組んでまいりました。また、周遊観光を促進するためのシェアサイクルの導入や周辺の観光資源を活用したツアーの開発・販売を行う拠点整備の応援も進めております。これに加えまして、eバイクやマウンテンバイクなど多様な自転車の利用ニーズに対応した情報発信やサイクルツーリズムをさらに促進するためのツアーガイドの養成などにも取り組んでいきます。

 

 今後も自転車活用戦略会議を定期的に開催し、専門家の御意見を伺いながら施策のフォローアップを行い、誰もが自転車の楽しさや魅力を感じることができるサイクル王国やまなしの実現に努めてまいります。


11.県立美術館における信頼性の高い収蔵品の管理方法の確立について

 収蔵品の盗難及び不適切な管理による所在不明という事案の再発防止に向け、県では、最新のテクノロジーや知見を活用し、膨大な数の収蔵品を管理できる体制を構築することとした。「山梨県立美術館収蔵品管理の効率化検討会議」を設置し、無線通信を介して個体を自動で認識できる仕組みであるICタグを活用した新たな管理方法を検討しているが、県立美術館における信頼性の高い収蔵品の管理方法の確立に向けて、どのように取り組んでいくのか、知事の考えを伺う。

(観光文化・スポーツ部長)

 県立美術館で発生した収蔵品の盗難事案及び紛失事案につきまして、収蔵品の管理体制に不備がありましたことを深く反省し、再発防止に向け管理体制の抜本的な見直しを進めてきたところでございます。

 

 事案の発覚を受け、速やかに危機管理の有識者や弁護士などをメンバーとする第三者委員会を立ち上げ、再発防止に向けた提言をいただきました。その提言を踏まえ、直ちに収蔵庫内作業の立ち会いや監視方法、収蔵庫の入室管理方法の改善など、盗難防止対策を講じたところでございます。

 

 これらの盗難防止対策に加え、一万一千点を超える収蔵品の管理を効率的に行うことが大きな課題となっていたため、ICタグを活用した管理システムの導入について検討を進めてまいりました。収蔵品の管理にICタグを活用することにより、膨大な作業量を伴うことが障害となっていた全数点検を定期的に実施できるようになります。

 

 有識者の助言を受け、システム運用に係る責任の所在や役割分担についても明確化を図り、効率的かつ確実な管理を実現できる見通しが立ったことから、所要の経費を九月補正予算に計上したところでございます。

 

 ICT技術を活用した管理と人の手による管理をしっかり組み合わせることにより、県民の貴重な財産である収蔵品の管理に万全を期してまいります。


12.消費者保護対策について

 スマートフォン等の操作に不慣れな高齢者を新たなネット購入トラブルから守るための未然防止策の強化や、「未成年者取消権」から外れた18、19歳の若者に、使い慣れたインターネットで手軽に契約等をしてしまう危険性について注意喚起するなど、社会情勢の急激な変化に対応した対策を講じ、被害者となりやすい高齢者や若者などを消費者トラブルから守ることが喫緊の課題である。そこで、県では、消費者保護対策に今後どのように取り組んでいくのか所見を伺う。

(県民生活部長)

 議員御指摘のとおり、近年の急激な社会変容に伴い、消費形態も多様化し、偽サイトなど悪質商法の手口が複雑化・巧妙化していることから、消費者保護の重要性はますます高まっています。特に高齢者については、単身世帯の増加など消費者トラブルに遭う危険性が高まっています。地域全体で啓発や声かけを行い、未然防止・早期発見につなげる体制は、これまで以上に必要不可欠です。

 

 このため、市町村と連携して取り組んできた、自治会、福祉関係者、民間事業者などの地域の多様な担い手による見守りネットワークの設置について、県内全域への拡充を迅速に図ってまいります。加えて、市町村職員や相談員を対象に研修会を実施し、身近な相談体制の充実強化も図ってまいります。

 

 次に、若者については、起こり得る消費者トラブルの未然防止とともに、自立した消費者となるための育成が重要です。このため、高校一・二年生に対するトラブルの実例を題材とした授業のほか、金融機関の方の講義も取り入れ、引き続き消費者教育に取り組んでまいります。

 

 さらに、契約の重要性を理解し、消費者として正しい選択ができるよう、大学などにおいて消費者教育コーディネーターによる出前講座を実施するとともに、SNSによる注意喚起も積極的に行ってまいります。

 

 あわせまして、国の消費生活相談のDX化に向けた検討状況を踏まえつつ、現状のメールによる相談体制の充実強化に加え、ウエブ相談などの導入についても検討を進め、必要な消費者保護対策を講じてまいります。


13.防犯カメラの設置促進について

 防犯カメラを真に必要な場所に設置し、県民の安全安心の確保に努める必要があるため、防犯カメラの設置促進事業は継続すべきであり、また、市町村において防犯カメラ設置の取り組みに温度差があってはいけない。山梨県民のために、また、山梨県を訪れる方々のためにも、県警察は各市町村等と一層の連携を図りながら本事業の着実な推進に努めてほしい。そこで、本事業の進捗状況と併せて、本事業を積極的に活用してもらうために、どのように周知を図っているのか伺う。

(警察本部長)

 防犯カメラ設置促進事業につきましては、防犯カメラを設置して地域の防犯活動に取り組もうとする市町村や自治会等に対して、設置に係る初期費用の二分の一を補助するものであります。

 

 事業を開始した令和四年度は、十四団体に対して合計四十二台、総額八百八十三万五千円の補助を行いました。本年度は、八月末現在、補助金交付申請書を受理したものは十八団体で、合計五十四台、総額八百八十万四千円であります。

 

 本事業の周知方法ですが、本事業の概要、申請方法等について、昨年度から県警ホームページへの掲載、地域住民の集まりにおける警察官による防犯講話の中での説明等を行っております。また、各市町村に対して案内文を発出しているほか、市町村が発行する広報誌等にも掲載してもらっております。さらに本年度は、各市町村の教育委員会を通じて学校関係者への周知も図っております。

 

 防犯カメラは、犯罪を行おうとする者に犯行を断念させるという犯罪抑止効果が期待できるとともに、事後の捜査活動にも活用することができます。このように未然防止と検挙の両面への効果から、引き続き防犯カメラの設置促進に努めてまいります。


(以上)